不要なもの


たたきつける、雨の音
あなたの、鼓動、息遣い
それがわたしの幸せの音






外は、大雨。
窓は雨が叩きつけられてバタバタと音をたてている。
せっかくの休日だというのに、私たちは電気もつけず部屋のなかで時間をただただ過ごしていた。

あなたはなんにもしないのが苦手なのか、テレビをみたり、音楽をかけたり、なんだか忙しそう。
私はなんとなくぼーっとしたい気分だったので、壁にもたれて座って目を閉じていた。

「なんかみたいテレビとかないん?」

あなたが聞く。
私は、

「別に。」

と、答える。
短い答えが不機嫌に聞こえたのか、あなたが私に近づく気配がした。

「つまらない?眠たい?」
「ううん、そんなんじゃないねん。大丈夫。」

私が答えると、安心したみたいに息を吐く。
せっかくあなたがそばにきてくれたのだからと、私は目の前の体温をもとめて手を伸ばす。
すると、あなたは不思議そうにその手をとり、でもちゃんとその腕の中に私を入れてくれる。

「やっぱ、眠いんちゃうん?」

そういって床に私ごと転がるあなた。
より、いっそうあなたの体温を感じることができてうれしくなった私は猫のようにあなたの首筋に自分の鼻筋をすりつける。男の人の匂いがした。

「日頃、暇な時間はなにしてるん?」

私の髪をなでながらあなたが聞く。

「うーん、テレビもみる、でも本読んでることが多いかな。あとはネット。」
「そっか。」

やっぱり、あなたはなんにもせずにいることが苦手のよう。
床に転がってるだけでは、どうも手持ち無沙汰なのか私の身体をさわったり、なんとなくテレビの話題をふってみたりとせわしない。

「んっ。」

さわさわと、私の身体をなでる手が私を気持ちよくしていく。

「ごめん。」

私は、なんとなく気分じゃなくてその手をとって頬を寄せる。

「そっか。」

あなたは気にするでもなく、もう一度私をぎゅっと腕の中に収めてくれる。
それが心地よくて思わす目を閉じた。

しばらくだまっていると、あなたの呼吸がだんだん規則正しくなっていく。
そっと顔をあげると、あなたは眠ってしまったよう。

外はまだ大雨バタバタと窓を打ち付ける。
でも、部屋の中は守られていて、あなたがそばにいて、それだけで私は幸せだと思った。
あなたの息遣い。心臓の音。私が好きなあなたの匂い。
回される腕から、寄せられる体から伝わる体温。
それだけで、十分、これ以上にないほどの幸せな時間の過ごし方なのに。

唯一、つけっぱなしのテレビから流れる意味のない雑音だけが不愉快だった。




たたきつける、雨の音
あなたの、鼓動、息遣い
それがわたしの幸せの音
がちゃがちゃした他の音なんていらない







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2012/10/09


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