独り言


ほんとうのことはどこにあるの

あなたとわたしのすぐそばにあるのに

なぜだかみつけられないの






つまらない。

テレビにかじりつく、あなたはまるで私のことなんて興味ないみたいにテレビの中で起ってることに夢中。
たまに、「今の面白かったな。」
みたいな視線を私に投げてくるから、私の存在を忘れているわけではないのだけれど。
私が話したいのはそんなことじゃないのに。
昨日電車でみた、変なカップルの話とか。
仕事中にあった、くだらない面白い話とか。
私のそばで起った小さな日常を、あなたと分け合いたいのに。
きっと、そんなことはあなたのなかではテレビの存在の下の下。
テレビに出ている芸人さんの面白い話を聞く方が、おもしろくて大事なんでしょ。

つまらない。

いつもいつも。テレビばっかりみて、話を聞いてくれないなんて。
なんのための時間がわからないじゃない。今のこの時間はいったいなんのため?
テレビがCM中だけかまってくれて、それが終わるとまたテレビの画面にくぎづけ。
それの繰り返し。
テレビをみてるときだけ、あなたは饒舌に語る。
この番組はここが面白い、だとか。
この芸人さんは好きじゃない、だとか。
それはたしかにあなたのそばで起ったちいさな日常なのだけれど。
そんなことじゃなくて、私と一緒にいない時のあなたが知りたいのに。

あなたの好きな番組が終わるのは、夜も更けたころ。
その頃には、もう私はうとうと眠たくなってしまってしゃべりたかったことなんて思い出せなくなってしまっているの。
あなたはそんな私の体を勝手に触って、ふわふわと気持ち良くする。
触られるのは嫌じゃない。だけど、それってなんだかさみしい。

一緒にいるのに、ひとりみたい。

会話がからまわり、独り言ばかり話す私たち。

それに気付かないあなた。
気づいている私。




ほんとうのことはどこにあるの

あなたとわたしのすぐそばにあるのに

もうみつけられないくらいとおくにあるの


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2009/01/04



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