蝶々結び



あなたと私のバランス

それは蝶々結びのよう

どちらかをひっぱると

とたんにほどけてしまうの






たとえば、私が。
突然さよならを告げたら、あなたはどうするだろうか?
追ってきて、引き止めてくれるのだろうか?

たとえば、あなたが。
突然さよならを告げたら、私はどうするだろうか?
追って、すがって、別れないでと言えるのだろうか?

たぶん、答えは両方NO。
きっとなにも言わずに別れるのだろう。
物わかりのよいふりをして。

「好きだ」という言葉は簡単だ。
その場の空気と、感情の高ぶりで、自分の感情を見失ったときつい口に出してしまう絵空事。
そんな言葉になんの意味もない。
こうして体を繋いだとしても、言葉以上になんの意味もない。

歩いていると、不意にほどけてしまう靴ひも。
それほどに、脆く、突然に、別れはやってくるのだろう。
だから、いつも必要以上に踏み込まない。
のめり込まない。
そんなことしても、なんの意味もないのだから。

ただ、今は。
この紐が、ほどけてしまわぬよう。
ひたすらに願うだけ。

すこしでも、この結び目が解かぬよう。
私は息をひそめ、あなたの腕の中にいる。
この絵空事が少しでも長く続くよう願いながら。

ひっぱらないで、ほどかないで、固く結んだ結び目を。
だけど、弱く脆い結び目を。





あなたと私のバランス

それは蝶々結びのよう

とちらかをひっぱると

とたんにほどけてしまうの







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2008/10/16


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