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コトリ


私はコトリ。
いつもカゴの中で、空に憧れ生きている。





このカゴの中はとても安全だけれども。
水も、食事にも困ることはないけれども。

だけど、

それだけでは、私のココロは満たされないの。
切られた羽根を羽ばたかせ。
いつか飛びたいあの空に、恋していた。

私には、空と同じくらい恋しているアナタがいた。
いつも私に水を与え、食事を与えるアナタ。
カゴの中は孤独だけれども。
アナタが見つめてくれているトキはとても幸せ。
カゴの扉をカシャンと開け、アナタのすべらかな手がそっとカゴの中に入ってくる。
私はその手に飛び乗り、アナタの手を指をついばむの。

すると、

アナタはそのすべらかな指で、私の羽を優しく優しくなでるのでした。
私はそれがたまらなく心地よく、一番素敵な声でアナタに愛を唄うの。

でも、

幸せなトキはあっというまに過ぎ去り、アナタの手はカゴから引き抜かれる。
そしてまた、カシャンと私はまた一人ぼっち。
アナタが居ないトキは、また私は空に恋をするの。

空を飛んでみたいけれど、アナタのそばは離れたくないの。

だから、

空を飛ぶ夢を見る前に、また私に会いに来て欲しいの。
私はアナタに聞こえるよう、懸命に愛を唄うわ。

ある日、カシャンと音がしてまた扉が開いた。

でも、

入ってきたのは、アナタのすべらかな手ではなく小さく幼い手だった。
小さく幼い手はカゴの中の私をつかみ、カゴの外へと連れ出した。

初めてみる格子越しでない空はとても青く、そして澄んでいた。
小さく幼い手は、私を窓の外へと出して、

そして、

手を離した。
落下してゆく、私。
羽根を羽ばたかせてみるけれど、切られた羽根ではやはり飛ぶことは出来ない。
落下してゆく、私。

だけど、

たしかにそのトキ、私は空を飛んだ。

気が付くと、私はアナタのすべらかな手の中にいた。

けれども、

身体はまったく言うことを聞かず、私はアナタの手を指をついばむことさえでず、愛を唄うことも出来なかった。
アナタのすべらかな手が私の羽根を撫でた。

やっぱり、

私はたまらなく心地よくなり、そのままコトリと目を閉じた。

カゴの中のトリは、カゴの中でしか生きられないの。
それでも、私は幸せ。
一瞬だけれども空を飛んで、

そして、

恋しいアナタのすべらかな手の中で消えてゆけるのだから。





私は、空とアナタに恋をした。
浮気ものだから、仕方がないの。





* * * * * * * * * * * * *

2007/06/04



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