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白い絨毯



窓を開けると

白い景色

あの人は今どうしているのだろう







いつもの曲が鳴り、私は重い頭を抱え目覚めた。
昨日泣きすぎたせいで赤くはれた瞼、軽い頭痛もする。
どうしていつもいつもこうなるとわかっていても、流れる涙を止められないのだろう。
あの人に届かない涙なんてなんの意味もないのに・・・

思いを伝えるすべはたくさんある。
たとえばメール。
あの人とつながっていたいと思う分だけ、メールの数も文字数も増えていく。
でも、それは所詮私の思いの一部分を切り取っただけに過ぎない。
そんな切れ端の思いがどれだけあの人に伝わっているのか、あの人のメールの文字からは読み取ることが出来ない。
文字は時折意地悪に嘘も真実へと変えてしまうから。
たとえば電話。
その瞬間たしかにあの人とつながっている。
たくさん言葉を交わし、心を繋ぎ合わせようとするけど。
結局言葉だけでは伝えきれず、電話越しのあの人の温度は伝えてはくれない。
暖かさも感じられず、あの人の表情すらうかがえない。
言葉は時折意地悪に真実も嘘へと変えてしまうから。

そうして私は伝えきれない思いを抱え一人涙を流すの。
遠い所にいるあの人に思いを伝えるすべをもたぬまま・・・
心に降り積もる思いは、私を覆い尽くさんばかりに深く冷たく積もっている。

暗い気分を振り払うかのように布団から這い出て、洗面所で顔を洗う。
冬の冷たい水が肌に刺さるようだ。
洗った顔をタオルでぬぐい、はれぼったい瞼を鏡に映す。

「ひどい顔。」

一人呟きため息を一つ。
なにげに見つめた洗面所の窓から見えるいつもの景色がなんだか違っていた。

「雪?」

窓から見える景色は白く、世界を染めていた。
といってもここは都会。
深く降り積もっているわけではなく表面を雪が飾っている、そんな印象だ。

「今日は寒いと思った。」

部屋に戻り、くもった窓から外を見渡した。
車の屋根に、塀の上に静かに雪が降り積もっている。
私は思わず窓を開け、外へと手をのばした。
空から舞い降りた雪が、私の体温にとかされ手のひらにのっては消えてゆく。
まるで私のようだと思った。
伝えたいことは、あの人に届く前に溶かされてすべて消えてしまう。
この雪のように。
そのくせにあの人に届かない思いはどんどんと深く降り積もり、冷たく重く私の心にのしかかるのだ。
不安とか嫉妬とかたくさんのものに変化して。
また悲しくなり、頬を涙が伝う。
どうして私はこんなに弱くなってしまったのだろう。
「恋愛は人を強くする」なんていう人もいるが、私は反対に弱くなっていっている気さえする。
あの人がいないときの不安を一人で抱えることすら出来ないのだから。

「がんばらなくちゃ、がんばらなくちゃ。」

心の中で呪文のように唱える。
窓を閉め、かじかんだ手を反対の手のひらで包む。
気を紛らわすために今日は朝ご飯を気合を入れてつくる。
いつもは焼くだけのトーストにハムや卵をはさんでホットサンドにしたり。
紅茶を葉っぱから入れてみたり。
朝食を無理やり胃に詰め込み、化粧と着替えをすませ、いつもの時間にいつものように家をでる。

白い絨毯を踏みしめ歩き出す。
さくさくと音をたて、白いくぼみが私の後を追ってくる。
傘の上に雪がゆっくりと降り積もる。
少しづつだけと確実に。

突然携帯が震えた。
ポケットから携帯を出すと、見慣れたあの人の名前。
メールを開くと一言

「今日はこっちは雪。」

と書いてあった。
そして添付ファイルが一つ。
それを開いて見ると、そこには不恰好な雪だるまが一つ写っていた。
朝からあの人はどんな顔でこの雪だるまを作ったのだろう。
それを思うと思わず笑みがこぼれた。

携帯のカメラを起動させ、写真を一枚とった。
そして文章も一言添えてあの人のもとへと。

「こちらも雪。同じ空だね。」

写真は白の中に残る私の足跡。
いつかこの足跡があの人の元まで続きますようにと願いを込めて・・・
ポケットに携帯をしまい、さっきより少し軽くなった足取りで駅までの道を急いだ。




空から降る雪は

冷たい空気と

暖かい心を運んできたの




* * * * * * * * * * * * *

2005/12/13

1300番のキリリクの品です。
「Star light Symphony」の夕星さまより「雪」でリクエストいただきました。
遅くなってすみませんでした。
こんなものでよければどうぞもらってやってくださいね。

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