月が欠ける頃には


見上げるとまんまるな月

貴方の体温を感じながら

涙がこぼれないよう空を見上げていたの






貴方の自転車の後ろにのって、いつもの帰り道を走り抜ける。
こんないつもの風景も今日で最後。
景色が後ろへ流れていくなか、私はただ背中から伝わる貴方の体温を感じていた。

「重くない?」

私が聞くと

「だから大丈夫だっていってるだろ?なんかい聞けばわかるんだよ。」

と貴方。

そんなたわいのない会話も今日で最後。
そう、私達はさっきお別れをしたのだった。
相手が憎いからとか、嫌いになったからというわけではない。
ただこれ以上一緒にいることがお互いにとって悪い結果しかうまないということがわかってしまったから。
それぞれの道の先にお互いがいなかった。それだけ。

「こうやって帰るのも最後だね・・・」

私がこぼすと

「そうだな。ちょっとさみしいな。」

と貴方。

ちょっとなんだ・・・とショックをうけつつ貴方の背中に頬を寄せる。
たしかに最近すれ違いが多くてろくにデートだってしてなかった。
でも、私はこうやって二人乗りで夜の道を走り抜けるのが好きだった。
風を感じて、貴方のぬくもりを感じて。

「駅までとかでいいよ。」

と私が言うと

「遠慮すんなよ、家まで送ってやるよ。そんな距離かわんないんだし。」

と貴方。

その優しさに不意に涙がこぼれそうになった。
それをさとられまいと貴方の背中から頬を離し、空を見上げた。
空にはまんまるな月。
大きくてまるい月が空から私を見下ろしていた。

「月、すごい綺麗。」

私が呟くと

「ほんとだ、ほんとに綺麗だな。」

と貴方。

そんななにげない瞬間がこのまま永遠につづけばいいのに・・・
そう思いながらも、貴方のこぐ自転車はどんどん私の家へ近づいていった。

「着いたね。」

と私。

「そうだな。」

と貴方。

これで私達は終わる。
明日から恋人ではなく、ただの友達。





見上げるとまんまるな月

この月が欠けてしまう頃には

私はきっと貴方の体温を忘れてしまうだろう





* * * * * * * * * * * * *

2005/11/01


800番のキリリクの品です。
「Alhambra」のAngeloさまより「月」でリクエストいただきました。
「Alhambra」さまでもGIFTとして飾っていただいております。背景の月がとっても綺麗です。


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